くもりときどき ななばあば

将来の自立のために、今私に何かできることがあるかな

投票率の高さの理由と、マオリ議席について探ってみた(ニュージーランド総選挙&国民投票2020)

 

 

f:id:nanababa:20201025174407j:plain

f:id:nanababa:20201025174329j:plain



○投票会場


10月17日土曜日に、歩いて30分の小学校に投票に行った。

実はうちから近いコミュニティセンターと中学校も投票会場となっていたが、就学前の子どもを連れていたため小学校の雰囲気がわかるかなあとそこを選んだ。

 
有権者は選挙区の中のたくさんある投票会場の中から選ぶことができる。 

多くの投票会場はコロナ対策の一環で、期日前投票のために2週間ほど開かれていた。

 

ちなみにわたしの選挙区の労働等立候補者のチラシには、ご丁寧に選挙区内の投票会場の住所、開所日時が記載してあり、参考にした。現在の労働党政権の自信を表しているようだ。

 

 

 

○投票用紙

校門を抜けると投票会場となる体育館に続く道があって、体育館の出入り口付近には私の他にも投票日当日投票にこだわる人、3名ほどが受付に並んでいた。

 

 

そして"写真撮影お断り"の紙がいきなり目に入ってきた。。

取材も兼ね、右手にEasyVote Card、左手にはスマホ(写真撮影モード)を携えていたから、多少の動揺は隠せなかった。スマホを渋々カバンに入れた。。

 

⬇️右下がEasyVote Card

f:id:nanababa:20201025174251j:plain

 

 

コロナ対策がやはりいくつか講じられていた。

 

選挙管理事務局の人たちはマスクをしていた人が多かったが、有権者はしかし、ほとんどが特にマスクをしていなかった。

 

 

受付にてサニタイザーで手を消毒してペンを取り、手の空いた選挙管理委員(ボランティア?)が座るテーブルに向かった。

そこで郵送された投票案内になっている台紙から名刺大のEasyVote Card(投票カード)を切り離し手渡した。

 

選挙管理委員は投票カードに記載された番号をもとに、厚さ1センチ弱の投票者名簿をめくり、1名につき5ミリ弱の行の記載事項を見てからフルネームを尋ね、私が応えると定規で線を引いた。

そして黒と紫のA4サイズの投票用紙を用意して、そこに書かれている番号?を別の帳面に記入して、投票用紙の番号?がかかれた左上?だったかに黒色のシールを貼ってから、私に手渡した。

 


意外と手作業満載の投票用紙授受だった。

 

 

 


日本の投票の流れは、やはり郵送された紙を切り離して、選挙管理委員に手渡して、そこで選挙人名簿と照合し、赤ペンで線を引き、確か機械に紙を挿入すると、総選挙用、国民投票用(あんまりなかったような)、最高裁判所裁判官の国民審査用の投票用紙が出てくるんじゃなかったかな。投票用紙は投票箱の中ですぐに開くという、プラスチック配合?か何かの特別な素材のものだったように記憶している。


ニュージーランドでは廃プラスチックの動きから、いくら高機能の投票用紙であってもきっと導入しないだろうと思う。

 

 


投票用紙は黒と紫、しかもA4サイズで大きいのに少し驚いた。

 

 

 

○投票ブース

   

さて、2枚の投票用紙を持って投票ブースに向かった。


段ボール素材でできていて、白かった。とてもシンプルだった。

わたしとしては記入台が少し高めだった。

硬さ的には記入台として十分だ。

 

 

費用的にはどうだろう。


日本のように平時?にはどこかに保管してあって?、選挙の時に運び出して組み立て設置するのと、

ニュージーランドの軽量であるだろう段ボール素材で搬入搬出そしてきっと組み立ても簡単で長期の保管場所を考えなくて済むのと。

 


あ、

日本は人口が多い。投票者数が多い。

そして解散総選挙があったりして急な事態に備える意味で、出費を抑えるために保管しておいたほうがよいのかもしれない。


一概に比べることは時にそう簡単でない。


段ボール素材の投票ブースは日本でも、臨時に新たな投票会場を設ける必要のある時、仮設の投票会場を設ける必要のある時に、参考にできるかもしれない。

(日本では段ボール素材の投票ブースを使っていない前提で書いています。日本は紙のリサイクルの歴史が長いから、あるのに私が知らないだけかもしれません。。)

 

日本では、候補者一覧、政党一覧が投票ブースに貼ってあり、それをみながら投票用紙に記入することも少なくない。漢字じゃなくてひらがなで書いてもよいのだった。

 

 

 

○投票用紙


ニュージーランドでは記入式ではないから、投票用紙には候補者名とチェック欄、政党名とチェック欄がズラッと並んである。届け出順ではなく、候補者一覧は候補者の名字のアルファベット順、政党名一覧はその通称名のアルファベット順のようだ。


これは移民で英語に馴染みがない投票者でもなんとなくわかるかと思う。


ちなみにEasyVote Card の台紙には、やはり選挙区の候補者名一覧と政党名一覧が同じ順番で並んでいて、事前にマークをしておいて投票会場に持っていけるようになっているが、これも移民対策になっているかもしれない。

 


ん?

 

投票用紙1枚に、候補者一覧だけでなく、政党一覧も記載されているから、小選挙区比例代表併用制を1枚で完結することができる。

これは1票をあらそう事態になった場合、数え直すときに最初からもう一度数えるのかな??

 


そして、国民投票の投票用紙には、あの2案件について(該当ブログ記事をご参照ください。)の質問がそれぞれ書かれ、YES(賛成)かNO(反対)のいずれかにチェックマークを記入するようになっている。

 


フォント(字体)は、いかにも選挙用?っぽいTimes New Romanなどではなく、もっと丸っぽい?読みやすい時代だった。

(うーん、きっと投票用紙の字体まで書いてる記事なんてないと思う。。だけど)実は投票という行為自体のハードルを下げるんじゃないかなあ。まあ投票場所に出かけている時点で更に投票を促す必要はないと思われるけど、投票がしゃっちこばった?権威につながった特別なものじゃなく、自分たちに必要な選択の機会だよねえ、と気づかせてくれる。ような気がした。(あくまでも私見です。はい。。)

 

2枚の投票用紙には、合計4カ所のチェックマーク(立候補者、政党名、国民投票2案件それぞれに賛成か反対)を記すと、用紙の真ん中に点線があり、そこを折って機密性が保たれるようになっている。ようだ。

 

 

投票数カウント方法については記入制でないから、日本のように目視で投票用紙を分けて後で機械で数を数えるのではなく、A4用紙を束ねて機械にかけて投票数をカウントするのも、もしかして機械化しているのかもしれない。とふと思った。もしそうなら、なんて合理的なんだろうー。

 

 

○投票箱


出入り口に進み、案内に従って二つ折りの投票用紙をそれぞれの色の、やはり段ボール素材の投票箱に投函した。

紫色の投票用紙は紫色の箱、

黒色の投票用紙は黒色の箱、というようにー。

 


ん?他にも箱が2つあった。

1つは白く、Special Vote(Special Boxだったかな?)とあり

1つはグレーで、Ballots なんとか、と書いてあった。

 

 

Special Vote は、

-投票者登録をしていなくても投票に出向いて何らかの身分証明をして登録アンド投票ができる。

 
-自分の選挙区以外にいても投票ができる。

 

Special Vote は他にも

-海外からの在外不在者投票

 (インターネット経由だけか郵送も可なのかは今のところ不明)

-口述投票(dictation votes)

 
などが含まれる。

有権者の必要に応じて柔軟に対応することが、投票率を上げる要因の一つだろう。



 

  

機密性については今思ったのだが、シールを貼ってもらった投票用紙の番号は何に使うんだろう。

もしかしてSpecial Voteの箱に入れる場合、開票して参照される番号なのか。

そういえば投票用紙を渡される前に記入していたのは投票用紙の番号かな??

としたら、どの候補に、どの政党に投票したか、国民投票で賛成か反対か、

遡ればわかってしまう、機密性については疑問が残る投票用紙だったのかなとふと思った。。(誤解かもしれないがシール貼りが気になったので記しておく。現時点で確認していない。)

 

 


もうひとつのBallots なんとかの箱は、投票会場から出るときに案内係に聞いてみたところ、マオリの人たちのための投票箱ということだった。

 

マオリの人たちの選挙制度


確かに投票者登録するときには登録用紙にてエスニシティが聞かれ、そのときマオリの人たちの場合は、その種族?(tribe)までを記入する欄があったと記憶する。内容確認がとれたらマオリ(人?族?)専用の投票権が与えられるのだろうか。

 

アオテアロア(マオリ語で"たなびく雲"とかいう意味)、ニュージーランドに移民が入ってきて少数派になってしまったマオリの権利を多数派が理解し、守ろうと努めていたのかなと感じた。

 

 

そこで調べてみることにした。


政府ウェブサイト

によると、

現在のニュージーランド議会でのマオリ選挙区議席の割り当ては7名とのこと。

 


選挙管理委員会ウェブサイト

によると、

5年ごとの国勢調査の時期に選挙オプションの機会があり、マオリ選挙区議席と一般選挙区議席の数は、国勢調査と選挙オプションの結果で決まる。

 

投票者登録をしたときにエスニシティマオリであると申し出ると、5年ごとの選挙オプションの機会に登録パッケージが送られ、マオリ選挙区に投票するか一般選挙区に投票するか、決めることができる。

 

直近の選挙オプションは2018年に行われ、次回は2024年の予定。


マオリ議員は、1867年に初めて選ばれた。それ以来変化を遂げ、

現在では

-マオリ選挙区(7名←1867年は4名)

-一般選挙区

-政党比例代表

から議会に選出されている。

 
とのこと。

 

 


ニュージーランドには、そこんところすごく歴史があるようだ。

そう、議会制民主主義制度などについて。

 

日本よりよっぽど新しい国なのに。

ん?私が日本の選挙制度の変遷を知らないだけなのか?

 
日本の選挙制度に興味が湧かない。。というのが正直なところ。

 

 

 
ニュージーランドの極めてリベラルな政治制度

 

学生時代には実用的な政治システム、柔軟な政治体制に興味があった。 

 

例えば
"アファーマティブ・アクション"や

"クォーター制"の

政治制度の仕組み、工夫に興味があった。

 

 

アファーマティブ・アクション:

"肯定的措置、積極的是正措置)とは、弱者集団の不利な現状を、歴史的経緯や社会環境に鑑みた上で是正するための改善措置のこと。"

(ウィキペディアより)

 


・クォーター制:

政治システムにおける割り当て制度。

(ウィキペディアより)

 

ニュージーランドの政治の歴史を少し紐解いてみることにした。


マオリ族の声を議会に確実に上げるための議席割り当て制度、アファーマティブ・アクションと言えるだろうか、その歴史はニュージーランドで議会制民主主義が発足して少し経ってから始まったようだ。

 


ニュージーランド公式歴史ウェブサイト

によると、


1852年制定のニュージーランド憲法(constitution)では選挙権は、人種に関わらず土地を持っていた人たちに与えられたようだが、先住マオリの人たちは共同して土地を持っていたために、有権者になれたのはほんのわずかだったが、

マオリとの(タラナキ、ワイカト)戦争をきっかけにマオリ議席について議論があがり、

1867年にはマオリが議会に4議席を獲得することができた。

 


そして1879年に成人男性に選挙権が与えられる12年前の1867年マオリの成人男性は一足先に選挙権を得ることができた

とのこと。

 

 

 


はっ!(驚き)

 


少数派となった先住民族の選挙権(つまり政治に参加することができる権利)が、多数派の選挙権よりも先に与えられた歴史が実際にあるということ、もっと世界に広く知られてもいいんじゃないか


と思った。

 

少なくとも、ん十年前には学校の政治学の授業や国際関係の授業で習わなかった。

寝てたか我??

忘れたか我?

いやこんな重要なことは覚えてるものだ。


確かその時はアメリカのジョンソン元大統領が行った施策だったかがその当時斬新だな、ほかにこういうことしてる国あるのかな、さすがアメリカ!と思ったものだった。。

 

 

 

ニュージーランドにこういう素晴らしい実例があるということは、時の各国政府は都合の良いように見て見ぬふり、知って知らぬふりをしていたのかと容易に想像できてしまうのだった。

その国々が議会制民主主義を謳っていたとしたら、少数派を隷属させていた、その権利を踏みにじっていた、名ばかりの制度だったということになるんじゃないかなー。

 

 

ニュージーランド、 

当時、人口の面からも知名度の面からもいわゆる大国ではない小国の部類に(失礼。でもそうかと。)あったかと考えていたが、(ここ最近調べた)女性の政治参加や先住民の政治参加について知るにつけ、なんと大きな心、大きな志で作られた国なんだろうー、と感動が静かに止まらない。。

 

 

 

 

○総選挙&国民投票2020の投票率


選挙管理委員会ウェブサイト

によると


"Voter turnout for the 2020 General Election is estimated to be 82.5% of those enrolled as at 6pm Friday 16 October. This compares with a final 79.8% turnout of those enrolled in 2017."

 


2020年の投票率は、10月16日金曜日の午後6時の時点で登録されている投票者をもとに算出して、82.5パーセント(推定値)とのこと。前回2017年の79.8パーセントを更に上回った。

とのこと。

 

期日前投票に関しては、2017年の47パーセントに対し、今回2020年は69パーセントもの有権者があらかじめ投票を済ませた。

とのこと。

 

どんだけ投票行為に積極的なのか。

 

 

議会制民主主義が始まるとほぼ同時に普通参政権が与えられた国は、

人々の選挙や政治参加に対する考え方、意識が

こんなにも違うのか。

 

 

時代が変わっても、

公正さとは何かを常に配慮して、

システムを柔軟に都度見直して更新して、

移民や若い世代の巻き込みを忘れないし、

有権者のニーズにもできるだけ応えていく。

 

 

票を投じる行為、票を通じて選挙に参加することが、

年齢性別エスニシティなど問わず、

当たり前の権利であり義務であり、

特別なことではない、

という選挙管理委員会の積極的な働きかけもある。

 

 

 

いろんな要因が複合的に重なって、8割を超える高い投票率をたたき出すことができるんだなと、ニュージーランド総選挙&国民投票2020を通じて思った。

 


そしてキウイの政治談義好きな理由もここらへんにあるのかな。

 


アメリカ大統領選の前の10月30日には注目の国民投票2案件の暫定結果が発表される。ということをしばし忘れて、キウイは今度はアメリカの大統領選に話題が移行しつつあるようだ。。

 

 

なかなか熱い2020年である。

 


⬇️国民投票案件1(ヘビーな内容)

nanababa.hatenablog.com

 

⬇️国民投票案件2(ヘビーな内容)

nanababa.hatenablog.com

 

⬇️お口直しとなりますでしょうか。

こちらに来てのお楽しみにしようという方は読まないでくださいませ。。

nanababa.hatenablog.com

 

 

⬇️衣替えの季節にいかがでしょうか〜♪

 

⬇️地域プケコ(野鳥)を細々と観察中〜


ひなプケコ 🐦🐦🐦生後20日 ☘️母プケコは食べさせる〜自分も食べる〜地面が乾燥して草を引っこ抜くのにちょっと大変💦