ニュージーランドでのプラスチックの扱い
- ●フラットの思い出
- ●ニュージーランドの不用品(ごみ)回収事情
- ●悩ましいソフトプラスチック
- ●2019年7月施行の法律
- ●日本のプラスチック容器包装
- ●島国で天然資源に乏しい日本とニュージーランド
- ●プラスチック、できることをやり続けたい
●フラットの思い出
依然お世話になったフラットでは最高10人ぐらいの人たちがひとどころに生活していた。自分と同じ嗜好の人たちが集まればそれは居心地が良いのかと思うが、いろんな年齢層、いろんな国籍やらエスニシティ、いろんな状況の人たちが集まっていると、生活様式が同じでなかったりする。何が正しいとかそうでないとかは関係なく、自分はどうして欲しいのかを大家さんに伝えて、大家さんが納得した上で仲介に入ることがあってもおかしくないだろう。
予備洗いをせずに洗濯機を回して、使い終わった後の洗濯槽が文字通りドロドロだったり、お手洗いの後をケアしてない人がいたり、朝5時からのドアの開け閉めばったんばったんや、階段も駆け上がり駆け下りるのがうるさかったりした。私も何度か大家さんに相談したり、改善してもらいたいと思う人に直談判したり、目に見えるところに張り紙したり!した。共同生活をする上で、直ちにあらためていただきたいことが定期的にわき上がるあの頃が今は少し懐かしい。
一方で、自分たちの生活にすぐさま直接影響が出るわけではないものに、ゴミ出しがあった。共用部分のゴミやリサイクル対象物は担当者が毎日集めては外のコレクトビン(収集用容器)に入れに行った。部屋のゴミやリサイクル対象物は、各自がそれぞれそのコレクトビンに入れに行った。
ゴミ収集ビン(ラビッシュビン)を開けると目に入るプラスチック容器。ミルクの容器やらテイクアウェイの容器など。
そして共用スペースのゴミ箱にかぶせられたスーパーマーケットのソフトプラスチックのショッピングバッグ、汚れ防止のためにライナーとして使われるのでなく毎日回収するたびに付け替えていた。担当者が大家さんから渡されるお金の中から毎日3枚、週に20枚ほど、金額にして10ドルだがお金的にも資源的にも、もったいなさ過ぎて気持ちわるかった。
いやだった。
環境問題を重要課題のひとつとするこの国のどこかしらに、こういうプラスチックが埋め立てられるのかと、やるせなさを感じながら、この国の現状に想い馳せたりした。
環境問題に真っ正面から取り組む人たち、ルールに則って不用品の仕分けに努める人たち、環境は二の次の人たちと、かなり温度差があると思う。
●ニュージーランドの不用品(ごみ)回収事情
年々、世界中のいろんな場所からのいろんな人たちを引き寄せるニュージーランド。人口が増加している今も、地球温暖化につながる二酸化炭素を排出しないという断固とした立場から、リサイクル対象品を積極的に回収する一方で、それ以外の不用品は基本ランドフィル(landfill、焼却せず埋め立て)対象となる。週に1度回収に来てくれる。
プラスチック容器は、缶や瓶、紙など他のリサイクル対象品と一緒に2週間に1度回収される。種類分けせずにそれらリサイクル対象品を一緒くたにリサイクルビンと呼ばれる、ラビッシュビンよりも一回り二回り大きな容器に軽くきれいにしてから放り込み、回収日当日朝に所定の場所に運び置く。
リサイクルビンのおかげでラビッシュビンは量が減ると思われるが、たまにラビッシュビンからプラスチック容器が見えていたりすると行政側の真摯な熱意?!が伝わっていないのかとやはり切ない。
この数年はニュージーランドの各地でランドフィル対象、ごみを減らそうと、野菜くずなどの有機物を取り分け、各家庭の土壌に取り込むコンポスト講座が盛んなようである。
●悩ましいソフトプラスチック
ニュージーランドでは、リサイクル対象となる硬めのプラスチックではない、袋型パッケージや野菜などが入っているビニール袋など、手のひらで丸められるものはソフトプラスチックと呼ばれ、昨年2019年5月?からいくつかのスーパーマーケットや量販店などで再び回収されるようになった。家庭でソフトプラスチックを集めそれを回収ボックスまで各自持っていく。
ソフトプラスチックの行く末は、ひとりひとり個々人にその判断を委ねられている。
フラットに住んでいた頃、自称リサイクルオタクの私としては不覚だったが、知らずに3ヶ月ほどソフトプラスチックをせっせとリサイクルビンに入れていた。
良かれと思っていたことが間違っていた。
リサイクルビンにソフトプラスチックまでも入れてしまうと、リサイクル回収品の選別をするときに機械に取り込まれ、故障する原因になるのだそう。だからソフトプラスチックはリサイクルビンに入れるよりもむしろラビッシュビンに入れランドフィルに回ったほうがよかったらしい。
しかしソフトプラスチック回収ボックスが再設置された今は、そこまで持っていくのがベスト。
ニュージーランドのソフトプラスチックは2019年5月頃まで中国に移送され、そこで分別され再利用されてる予定でいたが、処理能力を超えるソフトプラスチックが世界中から到着し、山積み状態が一部海に流れ出てしまったという。中国は各国からのソフトプラスチック受け入れを急きょ全面禁止にした。
ソフトプラスチックは海洋中で海流や波に揉まれ目視できないほど細かくなり、マイクロプラスチックとなって水産資源に取り込まれ、食物連鎖の上位種に行くほど濃縮される。10年近く前から問題視されてきてはいたと思う。
魚好きにはとっても心配なことだ。
目に見える形で何か動きがないと、
良い変化が何も起こらない
●2019年7月施行の法律
当たり前に使っていたソフトプラスチックをなくそうと、2019年7月1日から各小売店ではソフトプラスチック(使い捨てレジ袋)を顧客に配布、販売しない、設置しないという法律が施行された。
素材が化石燃料であろうと植物由来であろうと適用される。?
それまでは日本で言うマイバッグを持っていないと、レジのそばに置かれたビニール製のショッピングバッグが一番安いものだと50セントぐらい(30円ぐらい)で購入することができた。お店のロゴが入った不織布のショッピングバッグを1〜2ドルで購入することもできた。
法律施行後は、クラフト紙でできた紙袋を50セントで購入したりする。ものにもよるが5キロぐらいのものなら紙袋でも大丈夫そう。
生鮮食料品売り場には未だにロール式ビニール袋が設置されていたりするが、意識高い系の店舗では薄い紙袋に置き換わっていたりする。
法律施行前は、ソフトプラスチックが廃止されると店側も客側もどうなるだろうかという雰囲気が漂っていたが、それから1年経ち、少なくとも買い物袋については、ソフトプラスチックに頼らないライフスタイルが確立されている。
各自店から購入したロゴ入りの不織布ショッピングバッグを持ち歩いたり、天然素材でしっかりと形崩れしにくい高級感あるショッピングバッグなどを車にいくつか常備しておくのが当たり前になってきた。
●日本のプラスチック容器包装
東京に住んでいた時はプラスチック容器包装収集袋に、カタチのあるプラスチックだけでなく柔らかいプラスチックのパッケージなども一緒に入れて毎週袋がパンパンになっていた。そのおかげで燃えるゴミ(燃やせるゴミ)の量は減らせていた。
日本の方がソフトプラスチックまで含めた回収を早くに始めていた。
うろ覚えだが、
日本では燃えるゴミ(燃やせるゴミ)は高熱焼却されてダイオキシンが極力抑えられ、その際発生する熱が公共の温水プールや入浴施設、発電に利用されるのだと理解している。
そしてプラスチックの中でもペットボトルは、単一素材として回収されると溶かされて再資源化される。
ソフトプラスチック類は容器包装リサイクルの対象になる。燃えるゴミ(燃やせるゴミ)よりも高温で焼却できることから、ダイオキシンを出さない施設で燃料として使われる。焼却後のかすはアスファルトなどに混ぜられる。
と認識していた。
公益財団法人 日本容器包装リサイクル協会ホームページを見てみると
実際には、
容器包装リサイクルにより"「材料リサイクル」あるいは「ケミカルリサイクル」が行われ、再商品化製品(原材料)となって、さまざまな製品にリサイクル"されるとのこと。
材料リサイクルでは、再生樹脂、パレット(荷台)で全体の7割を占める。その他には日用雑貨、土木建築資材、園芸農業資材などにリサイクルされる。
ケミカルリサイクルでは、コークス炉化学原料など燃料?になるらしい。
リサイクルの結果残る"残さ"は焼却エネルギー回収、RPF化(Refuse Derived Fuel、廃棄物固形燃料化)、工業用燃料化されるという。
ちなみにRPF廃棄物固形燃料は、専用の装置で燃やされ乾燥や暖房、発電などの用途に供されるという。
●島国で天然資源に乏しい日本とニュージーランド
日本では、
人口が多い状況下、
ごみ焼却を選び高温焼却してダイオキシンを抑える手法を採用。歴史的にもリサイクルをしてきた背景があり、プラスチックではリサイクルを進めつつ燃料としての活用に取り組む。
ニュージーランドでは、
地球温暖化の影響による旱魃や気温上昇などを深刻な問題として受け止めている。
また建国以前の人の流れからと言っても過言ではないと思うのだが、太平洋島嶼国との密な関係を築き上げてきたが、近年の海面上昇に喘ぐ国々を守りたいという立場からも二酸化炭素排出量ゼロを進めたい。
電力量は夜間使用分を除いてほぼ100パーセント自然由来のエネルギーだという。プラスチックを燃焼させてエネルギーを産出する必要性が今のところない。だろう。
その立場から、今後人口が増えるとしても、ごみを埋め立てることを今後も止めないのではないだろうか。
埋立地からソフトプラスチックが流出するようなことにならないように願うしかない。
ユニクロが今のロゴになる前、20年以上前から利用していたが、当時はしっかりとしたプラスチックバッグでいろんなものを収納するのに使ったりしていたなと思い出す。
すっかり世界的企業になり、不要になったきれいな衣類をいわゆる発展途上地域に配布するなどの社会的責任を果たすことに積極的なユニクロが紙袋に転換するというのは、ソフトプラスチック問題が、日本やニュージーランドなどの島国にかかわらず、全世界が目を向けなくてはならなくなっているということに気づかせてくれる。
2019年7月24日のエコノミストの記事に、世界で少しずつ拡がっているプラスチックバッグ禁止の動きを見ることができる。
●プラスチック、できることをやり続けたい
ニュージーランドに来てから、不要なものをどうするのか、なるべく出さないようにするにはどうすればいいのか、以前よりもよく意識するようになった。
リサイクル対象品は同じ回収ビンに入れることに最初は戸惑ったが、リサイクルに気軽に参加できる。その際ソフトプラスチックは別に集めて回収している量販店まで持っていくことに慣れてきた。
できることをやり続けていく。
そのうち、もっといい解決策が見つかるかもしれない。
高い理想と、
人口増加による周知徹底の必要性と、
海に囲まれた国のランドフィル。
うーん、字余りー。